壮絶な戦いだった。のこぎりでマムシの頭を切り落として初めて、私は勝利した。
マムシを見つけたら殺せ。それが父から教わった使命である。できるものが駆除する。それが田舎で家族友人を守るすべだ。
放置すると必ずやられる。
というか、やられてるのは父だけだが・・・。
1か月で2回入院して、二回目は血清もったいないから散らす。と医者に言われて文字通り点滴だけで毒を散らしてくるとんでもない父だが、その父の教えで蛇にはかまれて動きを覚えろ、などと言われ、毒のない縞蛇や青大将を見つけては駆け引きをして捕まえるか噛まれるかを練習してきた。
小学校の3年生の時には毒がないと思っていたヤマカカシに手をかませて、あとで毒蛇だと知って頭がくらくらしたことがある。
その捕まえるか噛まれるかを練習してきた蛇たちに比べて、マムシは動きが遅く攻撃範囲も狭い。細心の注意を払って攻撃範囲外から確実に打撃を加えて殺す。
今日は不意にマムシに遭遇し、しかも暗闇の中だったので武器を探そうと焦れば、他にマムシがいれば噛まれてしまう。足で踏みつけるしかなかった。
ライトを照らし距離を測り、かかとで打撃を加える。地面が雨で緩くなっているのでなかなか有効打撃が加えられない。
打撃を与える数が少ないと逃げられると思ってマムシは川に逃げ込む。そうさせないためには打撃をかなり間髪入れずに入れ、マムシを戦わなければ生き残れないと思わせファイティングポーズを取らせなければならない。
危険だ。かまれない速さ、噛みついても靴の裏になるように精密に計算して踏みつける。三角の頭の位置を動きの中で確認し、それを芯に踏みつけるようにする。
20回ぐらい踏みつけたが下が緩くて頭が潰れない。土にくぼみを作りそこにマムシを誘い込み、頭を中心に緩い土の中にめり込ませた。打撃に目を回しているマムシはすぐにめり込んだ土からは抜け出せないだろう。
家に駆けあがりのこぎりを握り、正確に頭の下を切りつけた。何とか頭を切り話して戦いは終わった。
ほっとして、すっぽん釣りの仕掛けを上げた。
「重い、来た。あっ」
合わせる前に外れた。マムシとの戦いでもう集中力がなかった。すっぽんの手ごたえだったので悔やまれる。前の記事で書いたすっぽんが小さすぎるために釣り直しているのだが、ねらっれ見るとすっぽんは釣れないものだ。